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葛飾ビラ配布弾圧事件

愛媛新聞社説も最高裁判決に批判的論説

 2009年12月1日付けの愛媛新聞社説は、葛飾ビラ配布事件にたいする最高裁判決について「ビラ配り有罪 言論規制を拡大するな」の見出しで、次のような批判的見解を表明しています。

 政党のビラを配るためマンションに無断で立ち入った東京の僧侶が住居侵入罪に問われた事件で、最高裁は罰金5万円を言い渡した二審東京高裁判決を支持した。
 判決が重視する平穏に暮らす権利に異存はない。とはいえ回復不可能なほどの実害を与えたとも思いにくい。
 もう一方の普遍的価値である表現の自由とてんびんにかけたとき、果たして処罰するべき違法性があったのか、やはり強い疑問を抱く。
 未決拘置日数を1日5千円に換算するため僧侶は実質的には罰金を一円も払わされない。そうなると残るのは、恣意性をぬぐえぬ微罪逮捕へのお墨つきと、表現活動の萎縮効果ぐらいではないか。
 23日におよんだ拘置などからもその印象を強くする。見せしめといっていい。
 こうした制約は結局、私たち自身にはね返る。健全な民主主義社会の姿ではない。
 事件は5年前に起きた。部外者立ち入り禁止のマンションで、僧侶が共産党の都議会報告などを各戸のドアポストに直接投函。住民の通報で現行犯逮捕された。
 一審東京地裁は「プライバシーや防犯意識の高まりを考慮しても、廊下など共用部分への立ち入りを処罰の対象とする社会通念は確立していない」と無罪を言い渡した。
 高裁判決は表現の自由について「無制限に保障されるものではなく、他人の権利を不当に侵害することは許されない」とする逆転有罪で、最高裁も軍配をあげた。
 一般論ではその通りだが、判決は形式的にすぎ、本質や影響の大きさを見誤っていないか。当時、似た事件が続発した事情があるからだ。
 そのうち、自衛隊のイラク派遣反対のビラを配った市民3人に対して昨年、最高裁で有罪が確定した。
 これも表現の自由とのかねあいなどで承服しがたい判決だったが、立ち入りが昼間の10分足らずで事前の苦情もなく、態様がより軽微な今回の事件の判決では有罪の範囲がさらに広がってしまう。
 最高裁は表現内容の問題ではないという。だが、安価で効率的に伝達できるビラの配布行為の制限は、実質的に言論規制として機能するおそれがある。
 マンション住人が部外者に不安をいだくのは無理からぬ面もあり、配り方に工夫も必要であろう。ただ受け取る側も多様な情報にふれる意義を理解したい。これをもって表現活動が自粛に追い込まれることは避けねばならない。
 国連の自由権規約委員会は昨年、ビラ配りの摘発に懸念を表明、関係する法律から不合理な制限を撤廃するよう日本に勧告した。政府や国会、そしてつまるところは日本社会の人権意識が問われる。

葛飾ビラ弾圧事件への最高裁の不当判決に日本国民救援会や守る会が抗議声明

 最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は2009年11月30日、葛飾ビラ弾圧事件について不当にも上告棄却の判決を出しました。
 これについて、日本国民救援会と葛飾ビラ配布弾圧事件・ビラ配布の自由を守る会は次のような声明を発表しました、

【日本国民救援会の声明】

葛飾マンションビラ配布弾圧事件における

市民常識に背を向けた上告棄却に抗議する

2009年11月30日

日本国民救援会

会長 鈴木亜英

 11月30日、最高裁判所第2小法廷(今井功裁判長)は、葛飾ビラ配布弾圧事件の被告・荒川庸生さんに対して、東京高裁が言い渡した罰金5万円の有罪判決を維持し、上告棄却の判決を言い渡した。
 事件発生の直後から、荒川さんの裁判闘争を支援してきた日本国民救援会は、満腔の怒りをもって基本的人権を踏みにじる不当判決に抗議する。
 この事件は、民間の分譲マンションのドアポストに、日本共産党の東京都議団および葛飾区議団が発行した議会報告や住民アンケートなどを投函する目的でマンションに立ち入ったことを「住居侵入」として、荒川さんを長期拘留のうえ起訴したものである。
 一審の東京地裁は、「社会的通念上、本件のようなマンション内に立ち入ってするビラ配布が当然刑罰をもって禁じられている行為であるとの社会的通念が未だ確立されているとはいえない」として社会的常識に適った無罪判決を出した。
 これにたいして、検察側申立てによる控訴審では、この判断をくつがえす立証はなかったし、公判を通して、荒川さんがマンションに立ち入りビラを配布した行為により、住民の財産権が侵されたなどの事実は示されなかったにもかかわらず、東京高裁は、「たとえ思想を外部に発表するために手段であっても、その手段が他人の財産権などを不当に害することは許されない」として独断的に事実を認定、解釈して、荒川さんを有罪とする、市民感覚に真っ向から反する不当判決を出した。
 最高裁に上告して2年、全国47都道府県すべてから手紙・絵手紙・寄せ書きなど市民一人ひとりの声が4,800通を超えて寄せられ、最高裁に届けられた。それらは、「1枚のビラが人生の転機になった」「命を救う出会いを生んだ。配ってくれてありがとう」など、ビラが市民の大切な情報源であることが語られていた。
 具体的理由を示せずに出した東京高裁の不当判決を維持した今回の最高裁の判決は、市民の常識に背を向けた判決であり、昨年、自由権規約委員会から出された「表現の自由と参政権に対して課せられたいかなる非合理的な法律上の制約も廃止すべき」との勧告を無視したものである。また、「裁判所は『憲法の番人』として市民の表現の自由に対する規制が必要最小限であるかにつき厳格に審査すうこと」を求めた2009年日本弁護士連合会人権擁護大会採択の「表現の自由を確立する宣言」にも反するものである。
 日本国民救援会は、最高裁第2小法廷の裁判官全員に抗議するとともに、引き続き、言論・表現の自由を守るため、国民とともに、組織を挙げてたたかうことを宣言する。

【ビラ配布の自由を守る会の声明】

葛飾ビラ配布弾圧事件 最高裁判決に抗議する

ビラ配布の自由は。市民社会の自由と民主主義の象徴である

2009年11月30日

葛飾ビラ配布弾圧事件 ビラ配布の自由を守る会

 2009年11月30日最高裁第2小法廷は、葛飾ビラ配布弾圧事件について、荒川庸生さんを有罪とした高裁判決を維持し、大法廷に向け、口頭弁論を開けと言う要求を無視して上告を棄却した。

 私たちは、日常的に全国で行われている集合住宅へのビラ配布を有罪をした最高裁判決を認めることはできない。
 後生に残る最高裁の汚点ともいうべき不当判決に断固として抗議するものである。

 2004年12月、荒川庸生さんが、東京・葛飾区のオートロックでないマンションのドアポストに「議会報告」やアンケートなどを届けたところ、ある住民が「共産党のビラを配っている」と110番通報。亀有警察刑事課長・公安警察官らが急行し逮捕、家宅捜査。23日間拘留し、「住居侵入罪」で起訴されたものである。
 日本中で毎日、いろんな人の手によって集合住宅にも多数のビラが届けられておい、なぜ荒川さんだけが逮捕・起訴されなければならないのか常識では考えられない事件である。ビラを配布することは、誰でも手軽にできる主権者たる国民のもっとも基本的な表現手段として確立している。
 一審の東京地裁では、「ビラをドアポストへ投函することを刑事処罰の対象と見るような社会的通念は確立しておらず、立ち入り行為は正当な理由があり、住居侵入罪は成立しない」として無罪。
 東京高裁は、一審無罪をくつがえして罰金5万円の有罪判決。
 最高裁に上告して2年、全国47都道府県すべてから寄せられた手紙、絵手紙、寄せ書き、コメントなど4,800通を超える市民一人ひとりの声を最高裁に届けた。
 それは「壮大な協奏曲」であり、それを「構成しているのは一人一人のビラやポスティングへの関わりであり、言論・表現の自由や民主主義への想いであり、暗黒の時代への痛みを伴った追憶であり、司法・裁判所に託す祈りにも似た希望である。それらの『ひとこと』には、それぞれの時代を生きてきた一人一人の人生が綴り込まれている」のである。(上告趣意補充書7)
 一枚のビラが人生の転機になった、命救う出会いを生んだ、配ってくれてありがとう、など市民の大切な情報源であることが語られ、ビラを受け取るかどうかは個人の自由だとする主張が広く共感をもって受け入れられた。
 ビラが配布され手元に来てこそ、その情報の値打ちがわかる。どんなに大事なものでも配られなければその存在さえ知ることができない。ブラ配布が第三者によって阻止されれば、市民は必要なビラであるという意思表示の機会さえ奪われることになるのである。
 そもそも民主主義社会は、自由な意見、様々の考え方の交流なしには成り立たない。
 配布者が各家庭に届けようとしたビラ、その配布を第三者が妨害し止めるという
行為の罪深さ、反社会的な責任の大きさを考えるなら、居住者本人の同意でなく一律にビラ配布の禁止を、マンション管理組合などで決定し阻止することは、社会的にも許されるものでないことは明らかである。
 それを「居住者の総意である」としてビラ配布者を逮捕、起訴した警察、検察、有罪にした東京高裁は、国民の常識から乖離して、政治弾圧の意図をもって望んだといっても過言ではないだろう。
 政治的なビラの配布は、憲法上、表現の自由に基づくものであるとともに、国民の「知る権利」に貢献し、国民主権・議会制民主主義・地方自治の充実に資するものであり、刑罰によってむやみに規制されてはならない行為である。

 裁判所が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の信頼の向上につなげようという裁判員裁判開始の年に、最高裁は自ら「憲法の番人」としての権威を失墜させ、国民の立場で正義を判断する崇高な使命を放棄したと、怒りを込めて抗議するものである。
 ビラ配布の自由は、市民社会の自由と民主主義の象徴である。
 市民社会に根付いたビラ配布は、マンション住民にも平等に知る権利を保障されるべきであり、広範な市民の手によって今後ともさらに活発に行われていくものと確信する。

荒川さんや支援する会が最高裁に判決期日の取り消しと口頭弁論の開催を求める申し立てと宣伝行動を実施

 葛飾ビラ弾圧事件で被告の荒川庸生さんと弁護団が判決期日の取り消しと口頭弁論の開催を求め、最高裁に申し立てをおこないました
以下はそのことを伝える「しんぶん赤旗」(2009年10月7日付け)です。

 二審判決で不当な逆転有罪判決が出た葛飾ビラ配布弾圧事件の上告審で、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)が弁論を開くことなく、判決期日を19日に指定しました。被告の荒川庸生さん(62)や弁護団、ビラ配布の自由を守る会は6日、判決期日の取り消しと口頭弁論の開催を求め、最高裁に申し立てと宣伝行動を行いました。
 荒川さんは2004年に東京都葛飾区の分譲マンションの共用廊下を歩いて、ドアポストに共産党の区議団ニュースやアンケートを配布した行為が住居侵入罪として逮捕、起訴されました。
06年の東京地裁では「共用部分への立ち入る行為を違法とすることについての社会通念はいまだ確立しているとはいえない」として無罪判決。しかし、07年の東京高裁での控訴審判決では逆転有罪となり、荒川さんは上告中でした。
 弁護団は9月28日に上告趣意書を最高裁へ提出。同日付で最高裁は、荒川さんに判決期日(10月19日)を通告しました。
6日の最高裁正面では、ビラ配布の自由を守る会と国民救援会の会員20人が早朝から宣伝し、申し入れ書を提出。荒川さんと弁護団が、申立書を提出しました。
 申立書では、①判決宣告期日指定の取り消し、②大法廷での審理に回付して、憲法判断を行うべき、③口頭弁論を開き、公正、慎重な審理を行うべき、としています。
 最高裁前では、後藤寛主任弁護士が支援者らに報告。後藤弁護士は「補充書を提出したその日に判決期日を決めることが許されるのか。ビラ配布という表現の自由にかかわるこの判決はどんな結果にしても社会に大きな影響を与える問題であり、弁論なしの判決はあいえない」ご、最高裁の対応を批判しました。
 記者会見で荒川さんは「最高裁が補充書に目を通して事件としっかり向き合うならば、19日に判決では時間的に無理がある。大法廷で口頭弁論を行って、まじめな裁判をしてほしい。歴史にたえられる判決を求めたい」とのべました。

葛飾ビラ配布弾圧事件で全国の支援者が最高裁に無罪判決を要請

 葛飾ビラ配布弾圧事件の荒川庸生さんを支援する全労連、自由法曹団、日本国民救援会、ビラ配布の自由を守る会の4団体は19日、「ビラ配布の自由を勝ち取る全国要請行動」に取り組みました。
 最高裁前では全国各地から駆けつけた支援団体代表ら約40人が街頭宣伝し、通行する人や裁判所職員に「ビラ配布の自由を守ろう」などと書いたビラを配布しました。
 各団体代表がリレーでマイクを握り、「なぜビラ配布が犯罪なのか。言論への弾圧にたいして最高裁は勇気をもって無罪判決を出してほしい」(国民救援会青森支部の宍戸正孝事務局長)、「ビラまきは社会的な常識。無罪を勝ち取るまで支援したい」(同愛知県本部の竹崎久義事務局長)と訴え。国公法弾圧堀越事件弁護団の加藤健次事務局長は「表現の自由は憲法21条に基づく民主主義の大事な基本。裁判所がこれを破壊することは許されず、無罪判決しかない」と述べました。
 宣伝のあと、代表17人が最高裁に無罪判決を求めて要請。団体署名94と個人署名3,434人分、全国から寄せられた要請はがき646通を提出しました。
 夜にはビラ配布の自由を守る会が東京都葛飾区内で「最高裁勝利をめざす大集会」を開き、小田中聰樹東北大名誉教授が記念講演しました。(「しんぶん赤旗」2008年12月20日号より)

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