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県警裏金問題

県警裏金問題

仙波敏郎氏の国賠訴訟の高松高裁判決報告集会(9/30)が開かれます。多くのご参加を!

 9月30日午後2時から高松高裁で仙波敏郎氏が起した国家賠償訴訟の控訴審判決が言い渡されます。
 県警裏金問題を現職警官として全国で初めて実名告発した仙波敏郎に対して愛媛県警は見せしめの不当配転をおこないましたが、これについては県人事委員会、松山地裁のいずれもが県警の不当性、違法性を認定し、配転の取り消し、被害賠償の決定をおこないました。ところが、県・県警はこの敗訴を受け入れずに控訴していたものです。
 「仙波敏郎さんを支える会」は、この控訴審判決に多くの傍聴参加を呼びかけています。それとともに同会では、高裁判決報告集会を同日午後6時半から松山市のコムズ(男女共同参画センター)5階大会議室で開きます。高松高裁への傍聴参加が困難な人もぜひこの集会にご参加ください。

仙波敏郎氏の国賠訴訟控訴審が結審。判決は9月30日 

 愛媛県警の裏金づくりを告発したことにより報復的な配置転換をうけた仙波敏郎巡査部長が国家賠償請求をおこなっている控訴審の第3回口頭弁論が6月20日高松高裁で行われました。矢延裁判長は裁判の冒頭、前回の口頭弁論で県側が行っていた証人申請を却下し結審を宣告、9月30日に判決をおこなうことを通告しました。
 この控訴審は、昨年9月11日の松山地裁判決が仙波敏郎巡査部長の配置転換の違法性やこの違法行為への県警本部長の関与、さらに裏金問題の存在を安易に否定できないと認定するなど仙波氏の主張をほぼ全面的に認めたことに対して県警側が不服として控訴していたものです。
 結審後の記者会見で仙波氏側の弁護団は、県警側が控訴趣意書で1審判決を覆すだけの論拠をなんら提出することができていないこと、県側証人が却下されたことなどをあげ、1審判決が支持されるものと信じているとの自信を表明しました。また仙波氏本人もこの控訴は早期却下されるべきものであり「早く結審になりほっとしている」との感想をのべ、高松高裁が現判決を支持してくれることの期待を表明しました。

6月20日に仙波敏郎巡査部長の第3回国賠訴訟控訴審

 第2回口頭弁論は4月25日開かれましたが、裁判官3人のうち2人が異動で交替したため、十分な合議ができず、弁論を続行することになり、6月20日(金)午後3時から第3回控訴審が高松高裁でおこなわれます。

仙波敏郎氏のその他の当面の裁判日程

◆警乗手当訴訟''
 次回は7月15日午前10時〜同30分まで、弁論。証人尋問など、今後の審理の方向付けが議論される。被告・県側は請求に根拠がないと主張し、原告・仙波さん側は隊長らのこれまでの尋問では、鉄道警察隊の当時の実態が明らかになっていないとして、引き続いて隊員を尋問することの必要性を説き、出廷を拒否している他の隊員の勾引(拘束して証言を求めること)を裁判所に迫る。

◆ウイニー事件住民訴訟
 次回は7月28日、情報流出事件当時の県警捜査一課長で、現・刑事部長の二宮義晴、次々回9月8日は同じく捜査一課次長だった永田哲の両氏の証人尋問(いずれも午後1時15分〜4時30分)を行う。

愛媛県警の裏金解明にも画期的な仙台地裁判決

 08年3月31日に仙台地方裁判所が県警の裏金問題について下した判決が愛媛県警の裏金問題解明にも画期的意義を持つとして、日本共産党の佐々木泉愛媛県議会議員が見解を発表しています。その内容を以下、同氏のホームページ(http://sasaki-izumi.org/)から転載します。

 宮城県警幹部による裏金づくりについて、仙台地方裁判所は08年3月31日に判決を下し、オンブズマンが求めていた捜査報償費に関する行政文書の非開示を一部取り消し、そのなかで、1999年度の「捜査報償費の支出は、そのほとんど全部が実体のない架空支出であったと認めるのが相当である」とし、それらの支出は「捜査報償費を裏金へ回すための不正経理である」と認定しました。
 その「積極証拠」として、判決は、?県警元幹部が当時の浅野史郎知事に、「在職した当時の宮城県警察における捜査報償費の支出は98%から99%が架空であり、裏金になっていたと語った」。また、同元幹部が知事に資料を渡し、そのなかで「宮城県警察では、監査時の説明用として、財務会計帳簿や支出証拠書類から捜査報償費の執行状況を一覧表にまとめ、それに対応する新聞の切り抜きや想定問答まで準備しているが、そこに記載された執行内容は、平成12年度(注:2000年度のこと)の生活保安課についてはすべて虚偽架空のものであり、その他の課やそれ以前の年度においても、ほとんど全部が同様である」ことを示した ?2004年4月には、宮城県警の元警視が全国紙で「宮城県警察で数年前まで、報償費や旅費を中心に組織的な裏金作りをしていた」と公表した ことをあげています。
 また、判決は「補強証拠」として、?宮城県警察の元巡査部長が新聞報道で、「領収書を書かされた」と語ったことや、現職警察官を名乗る人物から浅野知事に、「協力者へ金を渡したことはない」旨の手紙があった ?北海道警察が1998年度から2000年度に捜査報償費などのほぼ全額が不正支出されたことを認め、福岡県警察も捜査報償費についての組織的な裏金作りがあったことを認めたほか、各地の警察で同様の問題が噴出している ?北海道警察の元警視長(原田宏二氏)は、別の裁判で「他の都道府県と同様に宮城県警察においても捜査報償費の不正経理があると見るのが一般的である」旨証言している などをあげました。
 こうしてみると、本県でも、現職警察官である仙波敏郎巡査部長の証言をはじめ、新聞・テレビなどで多数の警察関係者が「ニセ領収書による裏金作り」があったことを証言しているのですから、仙台地裁判決にそって、これらの証言を改めて検証する必要があります。
 2005年1月20日、ニセ領収書を書かず裏金づくりに加担しなかった仙波巡査部長が内部告発の記者会見を行ない、県警幹部の裏金作りを明るみに出したのに対し、県警は仙波巡査部長から拳銃を取り上げ配置転換する報復にでました。県を相手取って起こした国家賠償訴訟で、松山地方裁判所は昨年2007年9月11日、仙波巡査部長の主張をほぼ全面的に認めましたが、注目されるのは、この判決のなかで「内部告発の真実性は安易に否定できない」として、すなわち裏金作りについての内部告発の真実性について触れていることです。これをさらに一歩進めて、捜査報償費などの不正支出と裏金作りを認めさせることが必要です。とくに、宮城県では、当時の浅野県知事が元県警幹部の自宅を訪ねて、直接裏金づくりの実態を聞き取りしており、その内容を強力な証拠として判決が裏金作りを認定しているのであり、これに見習って、愛媛県でも知事が関係者から直接聞き取りをするよう求めたいと考えます。浅野前知事はほかにも、県職員に指示して捜査協力者とされる23人について電話番号を割り出して、うち数人に電話を入れ、謝礼金授受の事実がないことを確認しています。このくらい積極的に知事が動いてこそ、真相が明るみに出ます。
 
  仙台地裁の判決の中で、注目されることの一つに、オンブズマンが開示請求していた行政文書の「協力者情報」「捜査員情報」「警察職員情報」などについての判断があります。 このうち、「警察職員情報」については、次のような争いがありました。
  宮城県警側は、警察職員の氏名、印影が記録されている「施行伺」の開示に反対し、その論拠として、まず、警察業務の特殊性をあげます。
 「警察は…犯罪の予防、鎮圧、捜査等における中心的な役割を果たしていることが予定されている。そして、被疑者や被規制者等と直接に対峙し、逮捕や規制につき物理的かつ強制的に実現させなければならないものであるから、これらを目的とする職務については、その相手方となる被疑者やその関係者、過激派、暴力団等からの反発や反感を招きやすい。そのため、過去、全国において、警察を敵視する人物や団体等によって警察職員や警察施設が襲撃等を受けた事例のほか、警察に関する情報が収集されたと言う事例が現実に発生したことは公知の事実であり、宮城県警察もその例外ではない」
 そして、「警察職員の氏名及び印影を公開することにより、警察組織に恨みを持ちあるいは警察活動を妨害しようとする人物や団体等が、当該警察職員やその家族の私生活を侵害したり当該職員に襲撃、工作等を行ったりし、それによって当該職員が萎縮し、警察業務の停滞につながるおそれがある。また、警察活動を実地に行うものは主に警部補(同相当職)以下の警察職員であり、これらの警察職員の活動内容を把握することは、警察の動きを把握することと同様の効果があり、その結果、犯罪組織等が具体的な警察活動を妨害する行動に出るなどして本来の警察活動が阻害されるおそれがある」とし、公開することによって、公共の安全と秩序の維持に支障が生じるおそれがあるとしています。
  これに対しオンブズマン側の反論は次のとおりです。
 「警察職員のうち警部(同相当職)以上の警察職員については宮城県職員録や新聞の人事異動記事に氏名が公表されているところであり、襲撃、工作等が存在するのであれば警部以上の方がそのようなおそれは高いとも考えられるが、そのような襲撃等は生じていない。その他の警察職員についても、当該所属部署では名札を付けて一般市民と対応し、あるいは所属及び氏名を名乗って職務を遂行しているのであるから、それらにより警察職員の氏名や所属は容易に判明する。被告(県警側)は警察業務の特殊性を強調するが、警察業務が反発・反感を招きやすいとは必ずしも言えない。」
  そして、仙台地裁が下した判断は次のとおりです。
 「証拠によれば、警察職員情報が不法にデータ化されていることのあること、警察職員などを攻撃、襲撃の対象とする事件が実際に生じていること、が認められる。しかし、それらの行為が情報公開によって警察職員の氏名を公開した結果生じたものとする証拠はない。また、捜査第一課、同第二課、暴力団対策課及び交通指導課に係る施行伺は起案者である庶務職員の氏名・印影部分が開示されているところ、これによってそれらの職員やひいては警察業務などに何らかの不都合を生じたことの証拠もない。
 そうすると、前記各文書の起草者である庶務職員の氏名・印影を公開したからといって、それらの職員が攻撃の対象になるなどして犯罪の予防又は捜査等に支障が生ずる事態に至るおそれがあると にわかに認めることはできない。また、他にこれを認めるに足る証拠はない。」
 
 愛媛県でも、この判決にそって捜査報償費の施行伺について氏名・印影を公開すべきです。警察の言い分はなんとも情けない限りですが、実は、愛媛県でも「警察職員情報」の公表をめぐって、これに似た議論が以前ありました。2001年3月5日の県議会本会議です。以下、長い引用になりますが、答弁にある愛媛県警の主張は宮城県警とそっくりです。

佐々木泉県議 県警本部は、従来公表してきた定期人事異動での警部補以下の氏名を一切公開しない方針に切りかえました。その理由として、事件関係者から警察官本人や家族に嫌がらせが急増しており、現場の捜査員から公表をやめてほしいと要請がある、嫌がらせは氏名公表が大きなウエートを占めているとのことでした。県警記者クラブが抗議し非公開の撤回を求めました。「嫌がらせを取り締まる方法はいくらでもあるではないか。嫌がらせを取り締まるべき警察がそれをせずに、いわば嫌がらせに負けて氏名公表をやめるというのが、まず情けない。これこれの警察官がこの町を犯罪と事故から守っていますと公表することで犯罪の抑止力にすることをなぜ考えないのか。それでも警察か」と各方面から批判が起こっているのはご存知のとおりです。
 さきの閉会中の警察経済委員会でも、「非公開の根拠たるや何たることかと思う。警察官こそ毅然としてやってもらわなければ困る。情報公開の時代に逆行していると住民から受け取られかねない。県民に何かを隠そうとしていると受け取られかねない」などの意見が出されたとうかがいます。このとき警務部長が「警部補以下の職員は反感を買いやすい業務に従事している」と答弁したのには真実たまげました。こんな根性でよく警察官が務まると思います。
 警察法の第2条に何と書いてありますか。「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防」云々とあって、「その他公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とする」とあり、反感を買う業務どころか、本来、県民の共感を呼ぶ業務ではありませんか。それを、反感を買いやすい業務とは、最前線の警察官はどんな思いで聞くでしょうか。それこそ士気を低下させるものではないか。
 だいたい県民の反感があるとすれば、なぜだと思いますか。それは昨年明るみに出た宇和島署の誤認逮捕事件、しかも責任のある関係者を不処分にしたこと、新居浜署の一連の暴行事件、先月発覚した三島署の交通切符処理を忘れていた事件は例外中の例外として、暗やみで待ち伏せたり、警告もせずに駐車違反を一網打尽にするなど、点数主義の取り締まりで一般市民を苦しめ、まじめな警察官までも苦しめるやり方が反感を招いているのではありませんか。見当違いもはなはだしいと言わなければなりません。
……まず、県警本部長にたずねますが、あなたは毎日新聞2月23日付でインタビューに答え、警察改革を進めるにあたって、警察職員一人一人が公共のために尽くすという警察の原点に立ち返る必要を述べ、そのために、昨年の警察改革要綱の示す方向をめざすとしています。その第1番目に、警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化を掲げています。これに間違いありませんか。
  そうだとすると第2に、今回、氏名公表をやめることは警察行政の透明性確保に反するのではありませんか。
  第3に、警察官への嫌がらせが質量ともに増大しているというんだが、それを裏づける資料がありますか、ありませんか。もしあるというなら紹介してください。
  第4に、嫌がらせと氏名公表の因果関係を証明してください。
  第5に、私は、警察官の氏名を人事異動のときだけでなく県民の日常の利便に供すべく、県職員名簿と同様の住所、電話を含む名簿として作成するよう提案しますが、それをしてはならないという法的な根拠があればお示しください。
 
安原敬裕警察本部長 警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化は、国民のための警察の確立、新たな時代にこたえる警察の構築、警察活動を支える人的基盤の強化とともに警察改革要綱の4本柱の一つとして示されており、現在この要綱に沿った施策を鋭意推進しているところであります。
 次に、定期異動時での警部補以下の氏名公表をやめることは警察行政の透明性確保に反するのではないかとのお尋ねであります。まずは、警部補クラス以下の氏名の一律公表を行なわないと判断したことにつきましてご説明いたしたいと思います。県民の求める警察は、強い警察であるとともに親しまれる警察であろうと考えております。今回の措置は、現場の警察職員が私生活について憂えることなく安心して捜査活動等に専念することができる環境を整備し、強い警察を構築し、県民が安全、安心に暮らせる社会づくりを推進していこうという観点からのものであります。決して弱腰でいいということではなくて、強い警察を構築するためのものでございます。警部補クラス以下の警察職員、これは警察官におきましては係長以下のいわゆる非管理職でございますが、これら警察職員は、現場等において逮捕、取り調べ、捜査、そういった捜査現場の中核として業務をしておりますが、近年、本人や家族に対する嫌がらせが増加し、その内容も悪質化しております。これらに関し、現場の警察職員や家族から人事異動時に一律に氏名を公表していることがその要因として考えられることから氏名の公表を控えてほしいという要望が出されているところであります。以上のことを踏まえ、強い警察を確立していくためには、現場の警察職員が私生活を憂えることなく安心して職務に専念できることが必要不可欠であり、その観点から広く一律に氏名を公表していくことは適当でないと判断したものであります。なお、他都道府県の状況を調査いたしましたところ、全国の大半に当たる約8割の都道府県におきましても、本県と同様の趣旨のもとに、その氏名をすでに公表していない、あるいは公表しないことを検討している状況にございます。また、この氏名の非公表とあわせまして、親しまれる警察の確立や責任の自覚を促すために警察手帳の適切な提示等を徹底するほか、本年2月から制服警察官の識別章の試行着用、4月から窓口担当職員の名札着用などを実施するとともに交番勤務などの地域警察官による名刺や巡回連絡の効果的な活用、ミニ広報紙の積極的な活用を図るなど、今まで以上に地域に溶け込んでいきたいと考えております。ご質問の件についてでございますが、県警察としては、警察行政の透明性の確保の観点から、今後積極的に情報公開を推進していくこととしておりますが、その場合でありましても、すべての情報を無条件に公開することは想定しておらず、また、さきの警察刷新に関する緊急提言の趣旨からも犯罪捜査等の個別警察活動に支障をおよぼすおそれのある情報の開示まではもとめられていないというふうに認識しております。その意味で今回の措置は、警察活動に支障を生じさせないための措置であり、警察行政の透明性の確保と矛盾するとは考えていないところであります。
 つぎに、警察官への嫌がらせが質、量ともに増大していることを裏づける資料があるのかとのおたずねでございます。職員一人一人のアンケート調査等は行なっていませんが、県警本部で職員からの自主的な報告等で把握しているところでは近年、年々その件数が増加しているものと考えております。
 嫌がらせなどの例といたしましては、たとえばその、覚えておけ、いずれ後悔さしてやると電話がかかってきた上で、自宅駐車場にとめていた自家用車のボンネットを破損された、あるいは、おどれポリじゃいうて安心すなよと、お前にも家族がおろうがと家族への危害をにおわせる嫌がらせの電話がかかってきたこと、あるいは深夜数ヶ月にわたり無言の電話をされたことと、こういったものがあるわけであります。
 つぎに、嫌がらせと氏名公表の因果関係を証明せよとのおたずねでありますが、一般に嫌がらせを行なうためには相手を特定する必要があります。その際、個人を特定し住所、電話番号を入手するには、その氏名が基本条項としての性格を有しております。この件に関しましては、県警察が暴力団事務所等を捜索した際に、人事異動の新聞記事の切り抜きが発見された例がありますが、このことからも明らかなように、氏名公表が嫌がらせ等を行なうための個人特定の基本情報の一つとして使用されているものと認識しております。嫌がらせの要因は、その他いろいろあろうと思われますが、その要因を一つ一つ取り除き現場の警察官の執行力を高め、強い警察を確立していくことが必要であろうと考えております。
 最後に、警察官の名簿を作成してはならないという法的な根拠を示せというおたずねでありますが、本県の警察職員につきましてその名簿を作成してはならないという法的根拠はございません。しかし、ご指摘のような名簿作成につきましては、警察業務の性格から、先ほど申し上げましたようなその職員、家族が嫌がらせを受けたりあるいは被害者となるおそれがあることから適当ではないというふうに考えております。

愛媛県警裏金訴訟 高松高裁で第1回口頭弁論

仙波敏郎氏側が県側の控訴を鋭く批判

 愛媛県警の裏金づくりを告発した直後に拳銃の没収や報復人事などによって精神的苦痛を受けたとして現職の警察官・仙波敏郎巡査部長(59)が県や県警を相手取る国家賠償請求訴訟の控訴審第1回弁論が2月19日、高松高裁(矢延正平裁判長)で行われました。
 昨年9月の松山地裁判決は、愛媛県警の裏金づくりを告発した記者会見後の「県警本部長の権限」で新設された部署への仙波氏の配置転換を「報復として行われたと推認される」とし、県警による記者会見の妨害行為を「内部告発の信ぴょう性などを考慮し違法とする」など、原告の主張をほぼ認めています。
 口頭弁論で仙波巡査部長は、告発会見の直後に県警でおこなった拳銃の没収と新設の閑職への配置転換について「私の後に続く者をださないために組織をあげておこなわれた非人間的な行為、特に警官の象徴である拳銃の取り上げは、警察官としての適性を否定され誇りを奪われた。この見せしめ的な違法行為を高松高裁で明らかにしてほしい」と陳述しました。
 北海道警の裏金問題解明に携わった市川守弘弁護士が「裏金システムの維持と隠ぺいのため、組織的な仙波潰しが行われた」と話しました。
 弁論後の記者会見で薦田伸夫弁護士は県の控訴理由書について触れ、「地裁判決で裏金の存在を認める記述があった。それへの反証が盛り込まれると見られていたが、いっさい触れられたいない。これまでの主張が焼き直されただけだ」と、時間かせぎでしかない県側の控訴を改めて批判しました。(この項『しんぶん赤旗』から)

07年9月県議会での佐々木県議の県警に関する一般質問

2007年9月25日の愛媛県議会で日本共産党・佐々木泉議員が県警に関し一般質問をしました。質問内容と県警側の答弁は次の通りです。

質問:佐々木泉県議
 1つ目の質問は、県警の裁判関係ですが、最近、久保村正治という方の戦記を読んで驚いたことがありましたので、簡単に紹介します。
  通信将校として中国の最前線で従軍した久保村氏の体験によると、以下のようです。

 作戦行動中の補給は、米はもちろん野菜や豚なども大部分が現地調達である。調達とは、対価の支払いを伴わねばならないが、住民は行方がわからず支払いなしに持ち帰ることになる。これを徴発といった。端的に言えば泥棒である。しかるに帝国陸軍は泥棒部隊ではないから、対価を伴わない徴発行為は認めていない。作戦が終わると、対価を支払ったことにして受領証をつくる作業が始まる。中国人の書いた文字と日本人が書いた文字には歴然とした相違があってだれが見てもわかるから、日本人が受領証を偽造するわけにはいかない。そこで、屯営近くの文字の書ける中国人が村々の住民になりすまし受領証を書くのだ。この年は軍経理部による経理検査が行われた。そのため、給与係は受領証作成に汗を流した。
  全国の警察組織によって裏金づくりのために行われてきたにせ領収書づくりが、旧日本軍にも先例を持つ根の深いものであり、その根絶は歴史的事業であるとの思いを強くいたしました。

 さて、第1点は、一連の訴訟で、当然知事が受けて立つべき対策を県警に担当させっ放しにしているという問題です。私も何回か傍聴いたしましたが、被告席に並んでいるのは弁護士と県警の担当者ばかりで、知事部局の職員にお目にかかったことがありません。9月13日に、原告仙波敏郎巡査部長の勝利判決が出た本件損害賠償請求事件でも、県警が専ら対策に当たり、警察庁の指導のもとに進めてきたことが伺われます。今回の控訴に当たって、警察経済委員会では活発な審議がありましたけれども、例えば、裏金はあったのか、なかったのかという質問に、疑惑を持たれている側の県警が答弁するというシュールな光景が繰り広げられました。

 加戸知事は、判決後の9月13日のコメントで、原告の言い分がそのまま認められていることに県警が承服しがたいということであり、県警の気持ちを大切にして、控訴審に判断を求めることが適当だろうと語っています。これこそ感情論であり、県警の気持ちを最優先するばかりで、被告である県を代表する知事としての独自の判断に欠ける自主性のないコメントと言わねばなりません。

 また、地裁判決は誤った事実認定があると言いますが、県人事委員会も、地裁も、そして世論もそろって事実誤認しているとでも言うのでしょうか。県警だけが事実を認めていないというだけの話ではないでしょうか。

 この訴訟で問題になっているのは、県警による記者会見妨害工作、県警によるけん銃取り上げ、県警による配置転換、県警による勤勉手当減額であり、県警はまさに当事者です。その当事者に任せておいては、勢い感情論に走りがちで、控訴についての客観的判断はできません。したがって、その県警に任せっ放しというのはおかしい、そうは思いませんか、お答えください。

 第2点、知事は、仙波敏郎氏に対する配置転換を不当とした県人事委員会の裁決を尊重すべきではありませんか。人事委員会裁決に示された判断は、明らかに配置転換を不当としており、判決の示す方向と一緒です。すなわち控訴は、人事委員会の結論とも矛盾いたします。この点、知事はどうお考えですか。また、そもそも、この裁決の内容と、それに基づく配転取り消しを、知事はどう受けとめているかお示しください。

 第3点、松山地裁で争われている別の訴訟では、県監査委員が昨年6月23日付決定書で、ウィニーによる県警情報流出事件の調査の結果、協力者21名のうち 13名に対しては現金13件、計17万円及びギフト券1件3,000円が支出されていると確認したにもかかわらず、県はこの事実の認否を明らかにしていません。これも、県がというより県警が認めたくない内容なのでしょうが、それに引っ張られて、知事が監査委員の判断と矛盾する態度をとってはなりません。監査委員の判断を尊重すべきではありませんか、お答えください。

  第4点、以上のような理由から、知事は、控訴をやめ地裁判決に服すべきではないか、既に控訴したなら取り下げるべきではないか、なぜ地裁判決に服さないのかを改めて明らかにしてください。

 第5点、私は、仙波巡査部長の勝訴を歓迎いたしますが、その損害賠償100万円を県財政から支払うことが釈然としません。仙波氏に損害賠償を行うのはよい。しかし、その原因をつくった県警が負担せず、罪のない県民の税金から出すのはどうか、そう感じていたところが、国家賠償法第1条第2項は損害賠償について「公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」つまり請求できると定めています。知事は、100万円を当時の県警本部長ら県警幹部に請求すべきと思いますが、いかがですか。

 第6点、地裁判決によると、知事は、05年1月20日午前11時15分ごろ、当時の県警本部長から、午後に記者会見が行われるとの報告を受けたことが認定されています。そのことに間違いはありませんか。また、それ以前には県警から情報を得ていませんか。得たとすれば、それはいついつで、どのような内容でしたか。
 現職警察官による裏金告発という重大な事態について、知事は県警本部長からいつ情報を得て、当時どのような対応をしたのか、現在の事態の出発点にかかわる問題ですので、お尋ねします。

 第7点、県警本部長に尋ねます。
 にせ領収書による裏金づくりを告発した仙波巡査部長に、これまで何らかの処分はあったのでしょうか。告発内容が事実無根の虚偽であるとすれば、仙波巡査部長の行為は、県警の信頼を著しく傷つけ信用を失墜させたことになり、当然処分対象となります。もし処分がなかったとすれば、告発内容は正しかったことになる。処分はあったのかなかったのか、なかったとすればなぜなのか、合理的な説明を求めます。

 第8点、同じく県警本部長に尋ねます。
 愛媛県警の裏金問題を告発した仙波敏郎さんを支える会という支援組織のホームぺージによりますと、仙波巡査部長は、鉄道警察隊に復帰したばかりのとき、不審尋問で三重県警から指名手配された男を逮捕するという大手柄を立てたとのことです。仙波氏は、以前にも広域窃盗犯を逮捕し県警本部長表彰よりまだ上の管区局長賞を受賞し、そのときは本部長からも直々に金一封を送られたそうですが、内部告発後の今回はずっと格下げになって、直属課長の賞状1枚だけでした。制服の外勤警察官が大物指名手配犯を捕まえるという例は皆無に近いとのことです。

 そこで尋ねますが、個別警察官の評価を言うわけにはいかないと思いますので、一般論として、他県警の指名手配犯を逮捕した警察官は優秀な警察官と言ってよいのではないか、まして他県警の指名手配犯を2回も逮捕した警察官は相当優秀な警察官と言ってよいのではないかお答え願います。
  また、愛媛県警による指名手配犯の年間検挙数の推移及びその中で他県警指名手配犯の年間検挙数の推移はどうかについてもお答え願います。

答弁 加戸知事
  佐々木議員の質問に答弁いたします。
損害賠償請求訴訟の控訴の件に関しまして、まず、知事は、仙波敏郎氏に対する配置転換は不当とした県人事委員会の裁決を尊重すべきではないかとのお尋ねでございました。
県人事委員会は、任命権者が職員に対し行った処分等について、中立的な立場で審査等を行う機関でありますことから、その裁決は当然尊重すべきものでございます。
昨年6月の県人事委員会の裁決は、県警の主張とは異なっておりますが、一つの判断として法律上尊重すべきものではないかと考えております。ただ人事委員会の裁決は行政処分としての妥当性に関するものでありまして、今回のように違法性を前提として損害賠償を求められている裁判とは次元的に異なるものでございます。
今回の判決におきましては、事実関係も含め、県警の主張がほとんど認められず、私としても承服しがたい内容になっていることを踏まえまして、今般、控訴する必要があると判断したものでございます。

  次に、知事は、控訴をやめ、地裁判決に服すべきではないのかとのお尋ねでございました。
 先日、野口議員の質問にも答弁いたしましたとおり、この判決は、記者会見前の面談は記者会見妨害行為に当たる、あるいは記者会見後の配置がえは告発行為を行った原告に対する報復人事であるなどの、原告の主張にほぼ沿った事実認定のもとに判断されたものとなっておりまして、これらの点について事実関係での県警側の主張がある程度認められるとするならば、異なった判断がなされる可能性があると考えております。
 したがって、損害賠償を命ずる形の判決でありますから、私どもの判断として、これらの材料が原告側に損害を与え、県としての損害賠償を行わなければならないことになるのかということに関しましては、釈然としないといいますより納得できないものでございます。
 このようなことから、制度上、三審制を採用しております裁判制度のもとにおきましては、県警の意見を踏まえ、控訴審に判断を求めることが適当であると私自身が判断し、さらに、先般、議会の議決を経たわけでございますから、控訴を取り下げる必要はないと考えております。

  それから、知事は、仙波巡査部長の告発記者会見の情報を県警本部長からいつ得たかという質問がございました。
 2年以上も前のことでありますので明確ではございませんが、原告が記者会見を行います前に、当時の県警本部長から、県警の捜査費等に関し、現職警察官が記者会見を行う可能性があることの説明を受けました。また、あわせて県警本部長から、会見の内容を確認し、調査すべきは調査し、県民に対する説明責任を果たしたいとの説明も伺いました。

  県警の捜査費問題に関しましては、前年から議会等でも議論がなされているところでありましたことから、調査すべきことはしっかり調査し、適切に対応すべきだと申し上げたことを記憶いたしております。
 その他の問題につきましては、関係理事者の方から答弁させることといたします。

答弁 吉野内副知事
  佐々木議員にお答えします。
  控訴の問題でございますが、知事が受けて立つべき訴訟対策を県警に担当させっ放しというのはおかしいと思わないかとのお話でございます。
 愛媛県が被告となっております、あるいはなり得る裁判につきましてはいろいろございます。が、しかし、それぞれの事案ごとに、関係業務を担当する部局の職員を指定代理人に指定して応訴することとしておりまして、今回の裁判でも警察職員を指定して応訴したものでございます。

  次に、知事は、損害賠償100万円を当時の県警本部長らに請求すべきではないかとの点でございます。
  国賠法に求償権の規定があるのは承知いたしておりますけれども、そもそも損害賠償を命じる判決に不服があって控訴したものでございまして、そのような議論はあり得ないと考えております。
  以上でございます。

答弁 廣田警察本部長
  佐々木議員にお答えいたします。
  まず、損害賠償訴訟の控訴に関する御質問のうち、知事は、ウィニーによる県警情報流出事件に関する県監査委員の判断を尊重すべきではないかとのお尋ねでございます。
  県監査委員は、県の財務に関する事務の執行等を監査する中立的行政機関でありますことから、県監査委員が調査した結果については尊重すべきであると承知いたしております。
  一方、監査委員の調査結果につきましては、今回の訴訟とは別の訴訟事件として現在係争中であり、裁判の中で主張すべきことは主張してまいりたいと考えております。

  次に、にせ領収書による裏金づくりを告発した仙波巡査部長に何らかの処分はあったのか、なかったとすればなぜなのかとのお尋ねでございます。
 一般に、職員に対する懲戒処分等は、職員に不利益を課す手続でありますことから、極めて慎重に客観的事実関係を確認した上で、その可否、適否を判断すべきものでございまして、原告の記者会見の内容について、これを裏づける事実が確認されていないことをもって、直ちに懲戒処分等の措置をとる根拠とはなり得なかったものと承知しております。

  次に、他県警の指名手配犯を2回も逮捕した警察官は相当優秀な警察官と言ってよいのではないかとのお尋ねでございます。
 警察官の勤務評価につきましては、地方公務員法第40条の規定に基づき、毎年、評定権者が行っておりますが、単に一つのことをもって評価するのではなく、職員の担当業務全般に係る勤務実績、取り組み姿勢、人物評価及び適性等を総合的に判断して評価しているところであります。したがいまして、指名手配被疑者の検挙実績のみをもって当該警察官が優秀であるとか、そうでないとか評価することはできないものでございます。

 また、お尋ねの県警による指名手配被疑者の年間検挙数の推移につきましては、平成18年中は16人、平成19年は8月末現在で14人であり、そのうち他県警察が指名手配したものは、平成18年中は4人、平成19年は5人となっております。
  以上でございます。

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